又吉直樹「火花」を読んで
こんにちは、まるぞーです。
又吉直樹さんの「火花」を読みました。
前から読みたいと思っていた本でしたが、図書館にないと思っていたので、リクエストしてみたら、ちゃんと蔵書にあって、すぐに借りられて読むことができました。
若手芸人の売れる前の苦労話を描いた小説で、すぐに又吉直樹さん自身の体験をもとに書かれたものだろうと察しはつきましたが、あまりにも売れて芥川賞を取った作品ですので、気にはなっていました。
どうせ人気芸人の又吉さんが書いたものだから賞もとれたし、売れたに違いないと思い、大したことはないだろうと、半ば嫉妬も入り混じって、あまり期待せずに読みました。
読みはじめは大して面白いとも思わず、むしろ途中でつまらなくて、何度も中断しながら読み進めていたのですが、後半になるにつれ、だんだん本の中にのめりこむように、その世界観に没頭していきました。
主人公の「僕」こと徳永と、その先輩芸人である「神谷さん」との交流を描いたものですが、これのどこまでが又吉さん自身の体験、つまり実話なのかということはもはやどうでもよく、これは売れない芸人の苦労話というだけではなく、人生そのものの残酷ともいえるリアルを描いたものでした。
セミリタイアとは直接関係はないですが、就職して社会の歯車になって安定した生活を送るのとは真逆の、大きなリスクを抱えながらも、一発当ててやろうというか、それよりも自分の生き方、考え方を曲げないという強い信念のもと、世間に対して迎合することなく、自分の生き方を貫く人間の、壮絶な生きざまが描かれています。
そしてその人間が世間に受け入れられず、1000万円もの借金を抱え、自己破産し、最後は哀れともいえる、誰にも理解されないまま悲惨な状況に陥るという、何とも哀しい終わり方をしています。
ですから読後感は、決して充実感ではなく、すごく重苦しい嫌な憂鬱な気持ちになりました。
読み終わってどっと疲れ、このリアリティーに打ちのめされたとともに、自分の人生と重ね合わせ、ますます世の中が嫌になり、何もする気になれず呆然としてしまいました。
それでも読後しばらくして、この作品が気になって仕方がなく、もう一度読み返したくなり、今度は一字一句を味わうように、ものすごい集中力でもって、一気に読破しました。
同じ小説を立て続けに2回読むことも、またこのように一字一句の意味を考えながら、かみしめるように読むのも、ほんとに久しぶりの体験でした。
2度目に読んだ感想も同じです。
どっと疲れました。
でも胸にこみあげるものがあり、心で泣きました。実際に涙は流れませんでしたが、悲しいと言うよりは、むしろ悔しくてやるせない気持ちになりました。
自分の信念を曲げないで、こんなに必死に世間に迎合することなく生きた結果が、こんなに残酷なものなのかと思うと、人生がほんとに無意味に思え、世界が灰色に見えます。
これはとても暗い小説です。
お笑い芸人の話ななので、笑えるところもいっぱいあるかと思いきや、ほとんどありません。
作者が又吉直樹さんということもあり、先入観で、どうしても主人公が又吉さん自身に思えて仕方ありませんが、それを抜きにしても、これは久々に読んだ、心を揺さぶられた作品でした。
今日は私も、久しぶりにまじめな読書感想文を書いてしまいました。
最近、前立腺の症状やあそこの症状に加え、テニスのことで悩んで、自分でもちょっと精神が弱っているのがわかります。
夜も寝られませんし、かなりノイローゼ気味です。
ほんとは本を読むのも億劫で、頭に入らないはずですが、今日は一気に2回目を読みきりました。
しかし気分は晴れやかになるどころか、かえってより憂鬱になってきました。
この小説の評価がどうとかは私にはわかりませんが、非常に重たい本でした。心にずっしりと重くのしかかりました。
人生ってなんて残酷なんでしょうか。生きていくのがつらいです。
それではまた。