村田沙耶香 「コンビニ人間」を読んで
こんにちは、まるぞーです。
先日図書館で借りてきた、村田沙耶香さんの「コンビニ人間」を読み終えました。
読後の感想は、すごい小説でした、の一言です。
体が震えるくらいの衝撃を受け、心に突き刺さりました。
この前読んだ又吉直樹さんの「火花」も重たく、心に響いた作品でしたが、「コンビニ人間」は又吉さんには悪いですが、比較にならないほどすごい作品でした。
まさに芥川賞を取るにふさわしい作品だと思います。
作品のテーマは、「普通」とは何かということですが、同時に人間とは何か、生きるとは何かという永遠不変のテーマを考えさせられる作品です。
ウィキペディアに載っている村上龍さんのコメントに私は深く同意します。
村上龍は、「この十年、現代をここまで描いた受賞作は無い」と評価した。
この10年とは、つまり引きこもりが60万人もいて、未婚者が増え、子供を産まなくなり、非正規で働く人が増え、生き方が多様化していく中で、それでも普通がいい、普通にならなければならないという、世間からのプレッシャーを受けなければならない現代のことです。
この小説が書かれたのは2016年ですから、まだつい最近の話です。ですからまさに今、現代の様子が、主人公で発達障害のある古倉さんの視点を通して描かれています。
感想やレビューを見ると、 結構賛否両論で、否定的な意見もあり、
中には、
うーん。。。期待値は高かったのだけれど、わたしには合わなかった。自分の意志を持たない主人公に共感(もしくは理解)できなかった。むしろ、得体の知れない気持ち悪さを感じてしまった。
といった意見もありますが、おそらくこの人は、自分が普通だと思っていて、人間関係に窮屈さや、人に合わせて生きることがあんまり苦じゃない人だと思います。
だからこの小説は、いわゆる「普通」の人、良好な人間関係が築けて、世の中の常識に違和感なく適合できる人には、嫌悪感を与え、気持ち悪いと感じさせるのだと思います。
でも私は共感する部分が大いにありました。
白羽さんが、古倉さんに対して容赦なく吐き捨てる暴言、そしてそれに対して怒ったり感情的になることもなく、冷静に対処する古倉さんのやり取りは、読んでいて面白かったですし、ここまでのストレートな物言いに、痛快で、スカッとさせられました。
今の世の中で、「無職や子供を産まない人間は存在価値がないだの、男は強くていっぱい稼ぐ奴だけに価値があって、女は若くて美人なのしか価値がない、それ以外は生きる価値がない」なんてさすがに今、言いう人はいないでしょうし、ちょっと時代錯誤もいいとこだとは思いますが、こうはっきり言われると、口には出さなくとも、心の底ではまだそう思っている人も結構いるのではないかと思えてきました。
多様性を受け入れる社会だと言いながら、実はそれは建前で、本音は違うのではないか。だから少数派が生きづらい世の中なんじゃないかと思わせられる作品でした。
いずれにせよ、この作品もリアリティーがすごくて、ここまでの表現力がある作者の村田さんはただ者ではないと思いました。
やっぱりこういう才能を持った人こそ、プロの小説家と呼ぶにふさわしい人ですね。
まさに作品世界に引き込まれ、心を鷲づかみにされました。
小説にもいろいろありますが、こういう作品に出会えると、ほんとに読んでよかったなあと思いますし、読書もいいなあと思います。
今の世の中が生きづらい、人間関係がうまくいかないと思っている人には、是非一読することをお勧めします。
生きるのが少しは楽になるかもしれませんよ。
それともさらに失望するか、私には保証できませんが、少なくとも私は少し救われた気がしました。
「どんな生き方だっていいんだ、人それぞれでいいんだ。」そんなメッセージをこの本から感じました。
それではまた。